エアロゲルスパンレース不織布は、スパンレース製法を用いてエアロゲル粒子/繊維と従来の繊維(ポリエステル、ビスコース、アラミドなど)を複合化した機能性材料です。その核心的な利点は、エアロゲルの「超軽量・超低熱伝導性」とスパンレース不織布の「柔らかさ、通気性、加工性」を融合させた点にあります。従来のエアロゲル(ブロック、パウダー)の脆さや成形の難しさといった問題点を解決するだけでなく、一般的な不織布の断熱・保温性能の欠点も補います。そのため、「高効率断熱+柔軟な接着」が求められるシーンに幅広く応用されています。
防寒着・アウトドア用品分野
エアロゲルスパンレース不織布は、「低熱伝導率+柔軟性」という特性を有し、高級断熱材として理想的な選択肢です。特に、「軽量で保温性、通気性、蒸れにくさ」といった高い要求を持つ衣類や機器に適しています。主な用途は以下の通りです。
1.高級保温服中間層
➤アウトドア用ダウンジャケット/ウィンドブレーカー:従来のダウンジャケットは、ダウンのふわふわ感で保温性を高めていましたが、重く、湿気にさらされると保温性が急激に低下します。エアロゲルスパンレース不織布(通常、面密度30~80g / ㎡)は、中間層材として使用したり、ダウンと混合したり、単独で使用したりできます。熱伝導率は0.020~0.030W /(m・K)と低く、ダウンの1/2~2/3に過ぎません。同じ保温効果で衣類の重量を30~50%削減できます。また、湿気にさらされても安定した保温性を維持するため、高地、雨、雪などの過酷な屋外環境に適しています。
➤下着・ホームウェア:冬用の保温下着では、エアロゲルスパンレース不織布を20~30g/㎡の薄層(接着層)に加工することができます。肌に密着した際に異物感がなく、同時に体温の損失を遮断し、「かさばらない軽い暖かさ」を実現します。さらに、スパンレース製法による通気性により、従来の保温下着に見られる汗染みの問題も解消されます。
➤子供服:子供は運動量が多いため、衣類の柔らかさと安全性に対する要求は高いです。エアロゲルスパンレース不織布は、刺激が少なく柔軟性に優れているため、子供用ダウンジャケットや中綿入り衣類の裏地として使用できます。保温性を確保するだけでなく、従来の断熱材(化学繊維綿など)によって引き起こされる可能性のある皮膚アレルギーを回避します。
2.屋外機器用断熱材
➤寝袋のインナーライナー/靴素材の断熱層:アウトドア用の寝袋は、保温性と携帯性のバランスが重要です。エアロゲルスパンレース不織布は、寝袋のインナーライナーとして使用できます。折りたたんだ後の体積は従来の綿製寝袋の4分の1にまで小さく、バックパッキングやキャンプに最適です。アウトドアハイキングシューズでは、タンやかかとのライナーとして使用することで、足の熱が靴本体から逃げるのを防ぎます。
同時に、通気性により足の汗や湿気を防げます。
手袋・帽子の保温裏地:冬のアウトドア用手袋や帽子は、手や頭の曲線にフィットする必要があります。エアロゲルスパンレース不織布は、適切な形状に直接カットして裏地として使用できるため、指先や耳の先など、冷えやすい部分の保温性を確保するだけでなく、手の動きやすさにも影響を与えません(従来のブロック状のエアロゲルは、曲線部分にフィットしません)。
工業用断熱材およびパイプライン断熱材分野
産業分野において、高温機器やパイプラインの断熱・保温には「高効率・省エネ+安全性・耐久性」が求められます。従来の断熱材(ロックウールやグラスウールなど)と比較して、エアロゲルスパンレース不織布は軽量で、発塵性が低く、施工も容易です。主な用途は以下のとおりです。
1.高温パイプライン/機器用フレキシブル断熱層
➤化学・発電パイプライン:化学反応容器や発電所の蒸気パイプライン(温度150~400℃)では、従来、断熱材としてロックウール管外被が使用されていますが、設置が煩雑で、粉塵汚染が発生しやすいという問題がありました。エアロゲルスパンレース不織布は、ロール状またはスリーブ状に成形し、配管の表面に直接巻き付けたり、巻き付けたりすることができます。その柔軟性により、配管の曲がりや継ぎ目などの複雑な箇所にも柔軟に対応でき、粉塵の発生もありません。さらに、高い断熱効率により、配管の熱損失を15~25%削減し、企業のエネルギー消費コストを削減できます。
➤機械設備の局所断熱:エンジンやボイラーなどの設備の局所的な高温部品(排気管や加熱管など)には、凹凸面に断熱材を貼り付ける必要があります。エアロゲルスパンレース不織布は、部品に合わせて裁断・縫製できるため、従来の硬質断熱材(セラミックファイバーボードなど)ではカバーできない隙間をなくし、同時に作業者が高温部品に触れる際の火傷を防ぎます。
2.工業用窯・オーブンのライニング
➤小型工業用窯/乾燥設備:従来の窯の内張りは、主に厚い耐火レンガやセラミックファイバーブランケットで覆われており、重量があり熱伝導率も高いです。エアロゲルスパンレース不織布は、耐熱繊維(アラミド繊維やガラス繊維など)と複合することで軽量化を実現し、従来の素材に比べて厚さが1/3~1/2に抑えられます。これにより、窯内の放熱を抑え、加熱効率を向上させるだけでなく、窯全体の重量を軽減し、設備の寿命を延ばします。
エレクトロニクスおよび新エネルギー分野
電子製品や新エネルギー製品には、「断熱保護+安全難燃性」という厳しい要求があります。エアロゲルスパンレース不織布は、繊維比率の調整(難燃繊維の添加など)により、「柔軟な断熱性+断熱難燃性」という二重の要求を満たすことができます。具体的な用途は以下の通りです。
1.リチウム電池の熱暴走防止
➤動力電池パック用断熱パッド:新エネルギー車の動力電池が充電、放電、または熱暴走を起こすと、電池セルの温度が突然500℃以上に上昇し、隣接するセル間で連鎖反応が起こりやすくなります。エアロゲルスパンレース不織布は、カスタム形状の断熱パッドに加工でき、電池セル間、または電池セルとパックの外殻の間に配置できます。効率的な断熱効果により、熱伝達を遅らせ、バッテリー管理システム(BMS)の電源オフと冷却時間を稼ぎ、火災や爆発のリスクを軽減します。同時に、その柔軟な特性により、電池セルの配置における小さな隙間にも適応し、従来の硬質絶縁材(セラミックシートなど)の振動による剥離の問題を回避します。
➤蓄電モジュールの絶縁層:大規模蓄電発電所の蓄電モジュールは、長時間の稼働が求められます。エアロゲルスパンレース不織布は、モジュール間の断熱バリアとして機能し、モジュール故障による発熱が周囲のモジュールに波及するのを防ぎます。さらに、難燃性(繊維の調整によりUL94 V-0レベルを実現可能)も備えているため、蓄電システムの安全性をさらに高めることができます。
2.電子部品の放熱・絶縁保護
➤民生用電子機器(携帯電話、パソコン):携帯電話のプロセッサやパソコンのCPUが動作しているとき、局所的な温度は60~80℃に達することがあります。従来の放熱材(グラファイトシートなど)は熱を伝導するだけで、筐体への熱伝達を防ぐことはできません。エアロゲルスパンレース不織布は、10~20g/㎡という薄型の断熱シートとして利用でき、チップと筐体の間に貼り付けることで筐体への熱伝達を遮断し、ユーザーが触れた際に熱くなるのを防ぎます。同時に、通気性も備えているため、チップの放熱を促進し、熱の蓄積を防ぎます。
➤LED照明器具:LEDビーズは長時間使用すると発熱し、寿命に影響を与えます。エアロゲルスパンレース不織布はLEDランプの内側の断熱層として使用でき、ランプビーズの熱がランプシェルに伝わるのを防ぎます。これにより、シェル素材(プラスチックシェルなど)を保護し、高温による劣化を防ぐだけでなく、ユーザーがランプに触れた際に火傷を負うリスクも軽減します。
医療・ヘルスケア分野
医療現場では、素材に対する「安全性(非刺激性、無菌性)と機能性(断熱性、通気性)」への要求が極めて高いです。エアロゲルスパンレース不織布は、「柔軟性+低アレルギー性+制御可能な断熱性」という特性を備えており、医療保護およびリハビリテーションケアにおいて重要な役割を果たします。
1.医療用断熱材および保護具
➤手術用患者用保温ブランケット:手術中は患者の体表面が露出するため、低体温症が手術成績や術後回復に悪影響を及ぼす可能性があります。エアロゲルスパンレース不織布は、使い捨ての医療用保温ブランケットとして、患者の手術部位以外の部分を覆うことができます。優れた断熱性により体表面からの熱損失を低減し、通気性に優れているため発汗を防ぎます。さらに、エチレンオキシド滅菌が可能で、医療用滅菌基準を満たし、交差感染を防ぎます。
➤低温医療用保護手袋:凍結療法(そばかす除去のための液体窒素凍結療法など)やコールドチェーンによる医薬品輸送などでは、作業員は低温物体(-20℃~-196℃)に接触する必要があります。従来の手袋は保温性が不十分で、重量も重かったです。エアロゲルスパンレース不織布を手袋の内層に使用することで、柔軟な手の操作性を確保しながら、低温伝導を遮断し、手の凍傷を防ぎます。
2. リハビリテーションケア断熱補助材
➤熱傷リハビリテーション用ドレッシング:熱傷患者の皮膚バリアは損傷を受けており、創傷部の温度急激な変化や外部刺激を避ける必要があります。エアロゲルスパンレース不織布は、リハビリテーション用ドレッシング材の外側断熱層に用いることができ、創傷部局所の温度環境を一定に保ち(組織の修復を促進する)、外部からの冷気や熱源による創傷への刺激を遮断します。また、その柔らかさは体の湾曲部(関節創など)にもフィットし、通気性も優れているため、創傷部の蒸れによる感染リスクを軽減します。
➤温湿布/冷湿布用キャリア:従来の温湿布は熱が集中するため火傷を起こしやすく、冷湿布は低温の急速な伝導により不快感を引き起こす可能性があります。エアロゲルスパンレース不織布は、温湿布/冷湿布用キャリアの中間緩衝層として機能します。熱/冷気の伝導速度を制御することで、温度をゆっくりと放出し、快適な使用時間を延長し、肌に刺激を与えずに密着します。
建設・家具分野
建築省エネや住宅断熱の分野では、エアロゲルスパンレース不織布の「柔軟で施工が簡単+高効率断熱」という特性により、従来の建築断熱材(押出成形ポリスチレンボードや断熱モルタルなど)の施工の複雑さやひび割れやすさといった問題を解決できます。主な用途は以下のとおりです。
1.建物省エネ断熱層
➤内壁/外壁断熱ライニング:従来の外壁断熱材は、主に硬質パネルを使用しており、施工時に切断・貼り付けが必要となるため、接合部で熱橋が発生しやすいという問題がありました。エアロゲルスパンレース不織布はロール状に成形し、内壁や外壁の下地に直接貼り付けることができます。その柔軟性により、壁の隙間やコーナーなどを覆い、熱橋を効果的に遮断します。さらに、軽量(約100g/㎡)で壁への負荷を軽減するため、古い住宅の改修や軽量建築物に適しています。
➤ドアと窓のシーリングと断熱ストリップ:ドアと窓の隙間は、建物の主要なエネルギー消費源の一つです。エアロゲルスパンレース不織布は、ゴムやスポンジと組み合わせることでシーリングと断熱ストリップを製造でき、ドアや窓の隙間に埋め込むことができます。これにより、密閉性と気密性が向上するだけでなく、エアロゲルの断熱特性により隙間からの熱伝達が低減され、室内温度の安定性が向上します。
2. 住宅断熱材
➤冷蔵庫/冷凍庫の断熱内張り:従来の冷蔵庫の断熱層は、主にポリウレタンフォーム材で作られており、厚みがあり、比較的高い熱伝導率を有しています。エアロゲルスパンレース不織布は、冷蔵庫の内張りの補助断熱層として使用できます。発泡層と内張りの間に取り付けることで、同じ厚さで断熱効果を高めたり、発泡層の厚さを薄くして冷蔵庫の内容積を増やしたりすることができます。
➤家庭用配管・貯湯タンク断熱カバー:家庭内の太陽熱貯湯タンクや温水パイプは、熱損失を抑えるために断熱する必要があります。エアロゲルスパンレース不織布は、取り外し可能な断熱カバーとして利用でき、パイプや貯湯タンクの表面に敷くことができます。取り付け・取り外しが簡単で、従来の綿織物断熱カバーよりも優れた断熱性能を備えています。長期使用による経年劣化や変形も起こりにくいです。
コアアプリケーションエアロゲルスパンレース不織布同社の目標は「柔軟な形状で効率的な断熱を実現する」ことです。その本質は、スパンレース工法によってエアロゲルの成形限界を打破し、従来の不織布に高度な機能性を付与することにあります。新エネルギー、ハイエンド製造、アウトドア機器などの業界では、「軽量・高効率・柔軟」な素材への需要が高まっており、その用途はより専門的な分野(フレキシブルエネルギー貯蔵装置の断熱材、マイクロエレクトロニクス部品の保護、航空宇宙向け軽量断熱材など)へと拡大しており、今後の発展の可能性は大きくなっています。
投稿日時: 2025年9月17日
